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2 ◇自立への道

Author: 設樂理沙
last update Petsa ng paglalathala: 2026-04-03 23:35:07

 私と夫は大学卒業後それぞれ守備良く各々の希望する

職についた。

 夫は誰が聞いても知っている大手商社へ、そして私は

市の試験を受けて行政保健師となった。

 大学を受ける時、看護師を目指して勉強していたし、入学

してからも私の目標は看護師だった。

 だが就活していくうちに保健師に魅力を感じるようになっていった。

 この仕事は土日祝日休みで定時帰りできることが多く、ほかの看護職に

比べるとワークライフバランスが安定しやすいため、働きやすいという

メリットがあったから。

 結婚後も働きたいと思っていた自分にとっては、実に願ったり

叶ったりで、私は3年になると早めの就活にとりかかった。

保健師になるには看護師国家資格と、更に保健師の国家資格も必要になる。

そのため、私はそれまでも頑張ってはいたけれど、残りの2年間はより一層

望むべき目的に向かって勉強に邁進した。

 私にとって就活は、仕事を決める上で細く長く働けることが非常に

重要だった。

 保健師はことのほか人気があって、保健師の資格を取得していても

保健師として就職できるかどうか最後のさいごまで安心できないで

いた。

 そのため、合格の知らせをうけた時にはどんなに嬉しかったことか。

 私に稼ぎがあればこの先万が一、母親が父親と別れたいと言った時

力になってあげられる。

 仕事(から得られる収入)はどんなことがあっても自分を守ってくれる。

 お金さえあれば大抵のことは解決できるものなのだと、還暦を迎えた

人間が過去を振り返り悟るようなそんな考えを──

まだ22才の青臭い女子であった自分は、その頃すでに持っていた。

 あって欲しくはないけれど、未来の夫と決別するような日が来たとしても、

仕事が私を守ってくれる……

私やまだ見ぬ子供たちの大きな保険になる……

そういったことを充分理解していた。

 健康で働ける身体があれば……

そして労働の対価に見合う揺るぎない職があれば……

 人生は恐れるに足らず、そんな強い気持ちで私は大人として社会に船出した。

◇~深山康文と果歩の結婚生活

 私たちは大学2年の頃から付き合っていて、お互いの就活が上手くいけば

職場に慣れる半年から1年後を目処に入籍して一緒に暮らそうと約束していた。

 そして約束通り働き出して半年後、私たちは入籍して夫婦になった。

 早めの出産と子育てをと考えていた私は、就職してから3年目を迎える

その前に妊娠し、3年と4ヶ月目の臨月まで働いて産休に入った。

 案ずるより産むが易しとはよく言ったもので、思いのほか無事に

安産で女の子が産まれた。

 育休はギリ3年間取れるので気持ちに余裕があった。

 身体のことや状況によっては早めの復帰もありと考えていた。

          ◇ ◇ ◇ ◇

  商社マンはとにかく忙しい。

 だから平日夫に子育てや家のことを手伝ってもらうことはほぼ無理だ。

 実際忙しい夫を持つ身としては、産休が取れてその上育休までちゃんと

取れる職について良かったとしみじみ実感した。

 子供を持つことを前提に家を決めたので、徒歩で6~7分という

実家に近い場所を選んでいた。

 平日はもとより……

母は、私と孫の面倒を見るという水戸黄門さまの印籠よろしく理由付けが

あるので、父の居る土・日など夫が仕事があって出かけている日、もしくは

疲れて寝ている時を見計らってよく我が家に息抜きも兼ねてやってくるよう

になった。

 そんなこんなで母親の表情が明るくなったし、娘は可愛いしで

私もこれまでになく幸せな日々を送っていた。

 そんな中、夫の海外への単身赴任が急に決まった。

 前任者が病気で急遽帰国することになったからだ。

 付いて行きたいのはやまやまだけれど、産まれたばかりの娘が

いる身ではどちらにしてもすぐの帯同には無理がある。

 それに仕事を捨てるわけにはいかない。

 そして何より夫が商社に就職を決めた時からこんな日が来る

ことは予想されることだったので私と夫との間で話しはついていた。

 夫だけで単身赴任するという。

 なので、夫は可愛い娘と会えなくなることに後ろ髪を引かれつつも、

娘の100日目のお祝いも待たずしてひとり、赴任先へと旅立って行った。

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